洛友会 50周年に当たって
四国支部長 近藤耕三(昭28年卒)
○このたび洛友会がめでたく50周年を迎えましたこと、御同慶の至りであります。四国支部会員を代表してお祝いを申し上げます。
時は今、日本国にとって未曾有の大変革期に当たり、大学も独立法人化に向かって体制立て直しの重要な時期にあると存じます。次の50年を目指して御活躍を祈念致します。
○さて、洛友会が歩んだ50年を振り返ってみますと、高度成長から長期停滞に至る大きな波動を体験した50年であったと考えられます。
その前半は、文字どおり、右肩上がりの明るい時代でありました。 「もはや戦後ではない」という台詞に乗っかったかの如く高度成長期に入り、日本社会のあらゆる側面において工業化が、そして都市化が進展しました。
この時代、テレビ、新幹線などのインフラ整備と並行して、家庭にも家電機器が続々と入り込み、電力需要は2桁の成長を続けました。先輩達は、技術開発に全力を注ぎ、高効率大型発電所を建設し、大容量送電線、配電線網を全国津々浦々に張り巡らせ、電力需要の伸びに応えました。こうして、いつでもどこでも電気を利用することができる体制をつくり上げたことは、敗戦国日本を先進国の一員にまで押し上げた重要な要因
であり、洛友会の諸先輩が残した功績の一つであります。
○ 後半は一転して右肩下がりの時代を迎えています。
イラン・イラク戦争に始まるオイルショックは、石油エネルギーの上に浮かんでいる我が国社会の現実を直截的に提示し、経済社会の大転換を強要したものでありました。同時に、工業化、都市化が日本社会にもたらしつつあった多くの歪みが顕在化しはじめました。大量生産・大量廃棄による環境問題の深刻さが浮き彫りになり、地方の過疎化のみならず、都市近郊においても家族の絆がほころびはじめ、全国的に高齢化、少子化、そして急激な人口減少が現実のものとなりつつあります。
このような低成長、停滞の時代においても、科学技術の進展が止まった訳ではなくIT技術など、大躍進した分野も多くあります。しかしながら、工業化が残した歪みは大きく、これらの技術がその克服に寄与することは少なかったと考えられます。
○工業化、都市化がもたらした,大きな、そして多種多様な歪みの克服はほとんどすべて、21世紀の人間社会の課題として持ち越されています。従来の成長原理に基づく国家的社会統合から、サステイナブル(維持可能性)原理に基づく地域社会統合へのパラダイム・シフトの提案がなされるなど基本的な社会の在り方に関して、多様な試みが実践され始めていますが、科学技術によって解決されるべき課題も山積しています。
例えば、エネルギー問題や廃棄物問題に対して省エネルギー技術が有効であり、そのためにもバイオ・テクノロジーやナノ・テクノロジーの
進展が待望されます。
折しも、大学の独立法人化や電気事業の自由化など、21世紀の日本経済産業を支えるべき勢力が動揺を来している現状には一抹の不安を感じますが、既に何割かの研究者や技術者は日本社会のサステイナビリテイを目指して歩み始めています。京大研究陣の活動も報じられています。われわれの洛友会が60周年を迎える頃には明るい時代に戻っていることでしょう。
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