桂キャンパスの現況
工学研究科長・工学部長 荒木光彦(昭和41年卒)
京都大学では、21世紀の国際社会をリードする「エクセレント・ユニバーシティ」として各分野で社会に貢献していくべきであるという方針の下に、「優れた教育・研究の実践」および「絶えざる革新への対応」が可能となる「環境と人に優しく、固有文化と調和するキャンパス」を目標として施設整備を進めています。その一環として、京都市の御陵地区に土地を取得し、新しく「桂キャンパス」を構築しています。桂キャンパスには工学研究科と情報学研究科が移転する予定であることから、「Technology」と「Science」が融合する「テクノ・サイエンス・ヒル」が整備の基本コンセプトとなっています。
下左図に示すように桂キャンパスは、A、B、C、Dの4クラスター総計37haからなります。この中、Bクラスターは敷地中央部分に位置し、桂キャンパスのシンボルである時計塔を中心として、事務棟、インテックセンター、福利厚生棟、図書館、講堂などを有するキャンパスの中枢部分です。一方、A、C、Dの3クラスターには研究棟が配置され、大学院教育および工学・情報学の研究の場となる予定です。
現在までのところ、Bクラスターでは、事務棟、インテックセンター、およびレストラン・カフェ・保健管理センターなどからなる福利厚生棟が起動しました。この中、インテックセンターは、分野間の学際的研究や産官学共同研究を推進する目的で建てられたもので、大型構造物を必要とする実験が可能なシミュレーションラボを始め、各種の実験の場が準備されています。インテックセンターに隣接して、低温物質科学研究センターの桂分館が建てられており、本年度からヘリュウム液化機が稼働します。また、福利厚生棟のフレンチレストラン「ラ・コリーヌ」は近隣の方々の来店も多く、前日予約をしておかないと昼食がとれない程の賑わいをみせています。
一方、研究棟については、Aクラスターに工学研究科化学系6専攻および電気系2専攻、Cクラスターに建築学専攻が移転を完了し、研究活動を開始しています。電気系2専攻の教室・研究室などはA1棟と呼ばれる建物にあります。A1棟は地下1階地上4階の建物ですが、桂キャンパスが丘陵地であるため正面玄関は3階になっています。上図右の写真にあるように、長尾先生による「有志者事竟成」の書が掲げられています。Aクラスターの飛び地のローム記念館も完成し、国際融合創造センターを中心として、産官学連携および知的財産関連の活動が進められています。将来的には、Cクラスターに工学研究科地球系3専攻が来年夏頃に移転し、さらに同クラスターに物理系6専攻が、Dクラスターに情報学研究科の建物群が建てられていく予定です。また、Bクラスターに講堂等に使用される予定の船井記念館(仮称)が出来る予定です。すべての建物が建設され、移転が完了した時点では、教職員約1000名、大学院生および学部4回生約3700名、総計4700名となります。さらに、桂キャンパス南側の隣接地には京都市のイノベーションパークが設置されており、これらを合わせて桂の地に先端科学技術の一大研究拠点が完成します。
工学研究科化学系、電気系およびインテックセンターはすでに2年弱活動しているわけですが、その中では「学域統合による新材料科学の研究拠点」、「京都大学化学連携研究教育拠点」、「電気電子基盤技術の研究教育拠点形成」、「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」の4つの21世紀COEプログラムの研究が実施されてきました。また、イノベーションパークでは科学技術振興機構の研究成果活用プラザ京都および中小企業基盤整備機構の京大桂ベンチャープラザが完成しており、すでに先端的研究および産官学連携の拠点としての役割を果たしつつあります。
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