会員寄稿(3)
洛友会会報 212号


趣味の話「スケッチ」について

平田 康夫(昭和40年卒)

 昭和40年卒の我々は、40年目の節目に当たり、4月22日,23日に40周年記念同窓会を京都で開催することになっている。 電気総合館での講演会、桂キャンパスの見学、嵐山での大パーティ、嵐山や嵯峨野の散策、保津川下り、ゴルフなど盛り沢山の催物が予定されている。 本同窓会における講演会に当たって、電子卒の松本紘理事が「最近の京都大学の概況」と題して講演をされることがまず決まり、もう一人だれかと言うことで、電気第II卒の私に対して、何か話をするようにとの依頼があった。 肩の凝る話をして折角の同窓会の雰囲気をぶち壊してもいかがなものかと考え、「これからの人生 〜楽しい趣味の話〜」と題して、スケッチの話でもすることにした。 そして、どのような話にしようかと考えつつ、本原稿を書かせてもらっているところである。

 スケッチを始めてかれこれ25年になる。 当時、研究開発の傍ら標準化活動に携わっていた関係で、国際会議に出席のため海外特にヨーロッパに出かける機会が多かった。 歴史を感じさせる街並みや素晴らしい田園風景を眺めているうちに、いたずら半分に写生をしてみたのが、スケッチを始めたきっかけである。 最初は、鉛筆や水性ペンで構図を描き、色鉛筆で色塗りをしたりしていたが、その後色々試した結果、全く我流ではあるが、耐水性のドローイングペンと透明水彩絵具の組み合わせで描く方法に落ち着き、現在に至っている。
 
 私の作品例を少しばかり紹介させていただきたい。 スケッチ1は、フランス・ブルゴーニュ地方の最高級ワインを造っているロマネコンチ村を眺めながら描いたものである。 見渡す限り黄色く色付いた10月中旬のぶどう畑は私の最も好きなヨーロッパらしいモチーフの一つである。 2枚目のスケッチは、ご存知のように、京大正門前である。 瀟洒なフランスレストランがオープンするなど、時計台建物内が新装され、かって乱立していた立て看板などが一掃された後の、すっきりした京大の表玄関を描いたものである。

スケッチ1 ロマネコンチにて
 
スケッチ2 京大吉田正門前にて

 手軽に誰でもが年齢に関係なく楽しめる趣味として、スケッチをお勧めしたい。 「私は才能がないから」、「どうも子供の頃から絵は苦手で」と言った声をよく耳にするが、コツさえ覚えれば何とかなる、というより意外に上手くいくものである。 スケッチのための道具は、太さが0.5ミリ程度のドローイングペンと水彩絵具に加えて、B5版程度のスケッチブック、筆、水筒(最近はペットボトル)、布切れ、だけであり、3000円もあれば道具一式をそろえることができる。 また、30分もあれば描き終えることができ、後々まで旅の思い出が鮮明な画像として脳裏に残っていてくれる。 特に、学術論文とは異なり、オリジナリティ、正確さを要求されるわけでもなく、被写体の改ざん、捏造、修正、何でもありの世界である。 人様に迷惑をかけずに自己満足の世界に浸れるのもスケッチならではである。 また、我流は我流でそれなりに味のある作品ができるものである。

 旅先はもとより日頃気に留めることもない生活空間において、絵になる題材は山ほどある。 特に、京都の街は絵になるところが数多くある。 山あり川あり、秋の紅葉、春のさくら、初夏の新緑、名所旧跡、由緒ある神社仏閣、情緒溢れる裏通り等々、数え上げればきりがない。 私自身、京都を訪れた際に機会を捉えて、これまでに、疎水、法然院、真如堂、嵐山始め様々なところでスケッチを楽しませていただいた。 京都を描くことによって、改めて京都の良さを身を持って味わうことができ、京都で青春時代を過ごせたことに大いなる喜びを感じているしだいである。



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