インド旅行記(前編)
岡崎 幸治(平成8年卒)
今は妻子があり、特に小さい赤ん坊がいるため海外旅行に行きづらい状況だが、独身の頃は年に1回、1週間くらいの休みがとれると、海外へ1人旅に行っていた。
会社員であるため、1週間くらいの短い期間しか休みがとれないが、海外へ行くときはバックパッカーのような旅をしていた。パック旅行などを利用するのではなく、飛行機の往復チケットのみを購入し、宿泊は現地で探す。宿泊にはホテルは使わず、日本円で1泊100〜300円くらいの安宿に泊まったりして、つかの間ではあるが放浪の旅人になったような気分を味わったものである。
行き先はアジアばかりを選んでいたが、その中で一番印象深かったのがインドを旅行した時であった。
インドへ行ったのは、4年前の2月だった。その当時はインドとパキスタンの間が少し険悪になっており、デリー市内でも爆弾テロが発生していたこともあり、かなり不安を感じていた。しかし、本でインドへ行くと価値観が変わるなどということを読んでいたこともあり、一度は行ってみたい国であったため、不安を覚えながらも行き先をインドに決めた。
初日は、福岡空港からタイのバンコク経由でデリーへ向かった。バンコクでデリー行きの飛行機へ乗り換えたが、バンコクまでの飛行機と違いインド人ばかりが乗ってきて、日本人は全くいなかったため、タイで気軽に楽しむ人はいいななどと思いながらかなり不安を覚えていた。
機内では、インド行きの飛行機らしく、機内食はカレーのようなものが出てきた。日本のカレーとは違い、在日インド人が料理するインド料理と同じようなものだったが、なかなかおいしかった。
そしてバンコクを飛び立って約3時間後にインドの首都デリーのインディラ・ガンディー国際空港に到着した。到着したのは夜10時くらいで、日本の時間では深夜になっていた。入国審査、税関を通過し、出口へ着くと、遅い時間にも関わらず出迎えのインド人が大勢いた。
実はここがインド入国時の最初の難関であり、トラブルの絶えない場所である。ここで、たくさんのインド人が「タクシー、タクシー」と自分のタクシーに乗せようとするが、こういうタクシーはタチが悪く、客が指定した場所には行かずに怪しい旅行会社へ乗せて行くのである。そこに入ってしまうとたちまち数人の男達に監禁され、法外な料金のツアーを組まされて、最悪の場合はカシミール地方(インド・パキスタン国境の紛争地域)に連れて行かれたりするトラブルが多いそうだ(後日会ったインドを旅行中の日本人も同じトラブルに会い、数人のインド人に囲まれ殴られて、追いかけられて逃げ惑い、眠れない夜をすごしたという話を聞いた)。プリペードタクシーも空港にあるが、同様なケースが頻発しているらしい。
そこで、初日の分だけは前もって出迎えを行ってくれる宿泊先(ホテルではなく安宿だが)へメールを使って、宿泊と出迎えの予約をいっていた。出迎えの人が私の名前を書いた紙を持って出口で待っていたので、本当にほっとした。出迎えの人が来ていなければ、上記のとおりタクシーを使えないため、待合室で夜を明かさなければならないと思っていたからだ。
そして出迎えの人が乗ってきた車に乗って、宿泊先へ向かった。出迎えの人は20代前半くらいの男性だったが、ガールフレンドはいるかだの「ジギジギ」だのとしきりに話かけてきた(「ジギジギ」とは話の流れから性交のことを指すインドの隠語のようだった)。
深夜だったこともあり、ハイテンションのドライバーとのやりとりに疲れを覚えながら、約30分くらいで宿泊先のゲストハウスに到着した。場所はニューデリー駅前の通りで、通称「メインバザール」という有名な安宿街だが、暗くて様子がよく見えず、インドに来た実感はあまり湧かない。だが、道端に牛がいるのが見える。
宿泊先の「Ajay Guest House」に入ると、日本語が達者なインド人の宿主が対応してくれた。「地球の歩き方」にのっているゲストハウスらしく、日本人の客にも慣れている感じだった。中にはレストランや数台のパソコン、ビリヤード台まであり、欧米のバックパッカーが好みそうな雰囲気であった。ツアーも扱っているようであり、タージマハルで有名なアーグラーへはその日帰りツアーを利用しようと思った。
宿泊費は1泊170Rs(日本円で約300円)でやはりかなり安い。部屋に案内されるとベッドが1台とその上に毛布が1枚あるだけだったが、不潔な感じはなく、不満はない。トイレを見るとやはりインド式(水で尻を洗う方式)だ。しかし、さすがに水洗いはためらわれたので、ティッシュペーパーをつまらせないようにして使うこととした。
その夜は移動だけで疲れてしまったので、シャワーを浴びるとすぐベッドに横たわり眠った。デリーでは、2月は昼間は20度くらいの気温で過ごしやすいが、夜は5度くらいに下がり少し冷え込む。その宿には毛布1枚しかないため、寒くて夜中に何度か目が覚めてしまった。
2日目は、現地時間で朝5時頃目が覚めた。外で何やら宗教音楽っぽいのが流れておりそれで目を覚ました。さっそく宿の外に出てみた。夜は暗くてよく周囲がわからなかったが、外は日本ではありえない眺めだった。インド式の店舗や建物が通りに建っており、やはり通りの真ん中を牛が堂々と歩いていた。通りを歩くとチャイ売りのおじさんから「チャイ、チャーイ」と声がかかる。インドに来たんだなとこのとき初めて実感した。
以上、2日目の朝までインド旅行の顛末を紹介させて頂いたが、インドには1週間ほど滞在した。続きはまた中篇、後編を書かせて頂く機会があれば紹介させて頂きたいと思う。
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