巻頭言

洛友会会報 215号


新年のご挨拶

洛友会会長 
長尾 真(昭和34年卒)

 新年明けましておめでとうございます。
 今年も洛友会の皆様が健康で、良い一年間をお過ごしなることをお祈り申し上げます。

日本の国際的な立場
 さて昨年を振り返ってみますと、日本という国が国際的にも国内的にもますます厳しい状況に置かれた一年であったと存じます。国際的には、北朝鮮、中国、韓国、米国、さらには世界各国との関係から、“自立した国としての日本のあり方”を真剣に考えねばならないということを自覚させられた年でありました。経済的にはバブル崩壊の時代をようやく克服し、少しは明るい兆しが見えてきたという、ちょうどその時にこのような自己の存在そのものを問わねばならない国際的環境になったということは大変ですが、ある意味では良かったのではないかと考えます。
 日本という存在を、国際社会という複雑な力学の働く場においてどのように位置づけ運営してゆくかという問題に、はっきりした考え方を与え、一定の方向性を出すということが今年の最大の課題と思います。将来の日本の姿がある意味で決められる年となる可能性がありますから、これは安倍内閣や国会議員などの政治家に任せておくということでなく、国民一人一人が真剣に考えねばならない課題であります。

教育再生
 国内的にも多くの問題が発生しましたが、その中で、私は教育問題がもっとも大きく重要な課題であると考えます。教育基本法改正案が審議されている(平成18年11月末時点)ほかに、教育再生会議が作られ、いわゆる骨太の方針が検討されることが期待されておりましたが、いじめ問題の議論に終始し、しかも技術的なことに議論の時間をとられてしまったのは残念なことであります。
 こういった問題は技術的なレベルで工夫をしても根本的に解決するものではなく、もっと教育の根本問題に立ち返って国民それぞれが納得できる基本的、精神的なレベルのものを明示しなければならないと存じます。

道徳心の涵養
 それは自己責任と道徳ということにあるのではないでしょうか。道徳という言葉は戦前の悪いイメージを連想させるからかもしれませんが、戦後ずっと今日まで公にはほとんど使われず、避けてこられた言葉であります。倫理であるとか規範といった言葉が使われていますが、これらは社会の多くの人々によく理解される言葉ではありませんし、知が先行して情・心の問題として把握されにくい概念であります。
 そもそも道徳という言葉を率直に掲げる勇気が欠けていて、倫理・規範といった表現しかできないところに現代日本社会の問題があるのではないでしょうか。何でも他人のせいにするのでなく、自分の判断と責任ということをよく自覚し、もっと単純率直になる必要があると思います。
 ただ自己責任や道徳ということを小中学校でどのように教え、実践につないでゆくかは非常に難しい課題であります。下手をすると子供たちを強制することになりかねませんから、こういったことはまずは各家庭を中心に大きな愛情を持って行うべきことでしょう。しかし今日の親自身で自己責任という考え方や道徳を身につけていない人もかなりいると考えられるわけですから、これは時間をかけて国民全体の運動として進めてゆくことが必要でしょう。

継続的な努力
 以上のような国際的・国内的な基本的に重要な課題は、戦後60年間の歴史的産物として顕在化してきた問題ですから、これを正して健全な姿に持ってゆくためにはこれから相当の年数が必要であります。今年はそのターニングポイントになる年であるという予感がしますが、急速に変えようとすればかえって別のひずみが大きく出てきますから、しっかりした長期的方針を立て、それを揺らがせず、忍耐と寛容の精神でもってしっかりと持続してゆくことがもっとも大切なことと存じます。

洛友会活動
 洛友会の昨年の活動は、一昨年からの改革委員会の皆様方の努力もあり、段々と活発になってきました。総会をはじめ各支部においても支部総会が行われ、関東・関西支部などにおいてはそのほかの行事も行われ、会員相互の親睦が図られました。懸案でありました会費の納入状況も少しずつ改善されてきておりますが、会員の皆様のさらなるご理解を得てよりいっそうの納入率の向上に努力したいと考えております。
 教室との関係では、電気系学生諸君の入学式、卒業式の会に洛友会会長として出席し、お祝いの言葉を述べるとともに洛友会活動への理解を得る努力をしております。また秋の電気系教室懇話会を教室と共催し、会員の方々にも出席していただき、先生方や学生諸君との交流を深めました。こういったことを今後もっと強化し、少しでも我々の後輩のために役立てれば幸いと考えております。

事務局移転
 洛友会活動において一番大きな変化は、事務局を桂キャンパスにある電気系教室内に移し、事務局活動がより円滑になるようにしたことであります。これは教室の先生方のご理解ご協力があって実現したことで、深く感謝いたします。特に事務局を担当してくださっている大澤靖治教授と事務をしていただいている山田美津紀さんには心からお礼申し上げます。また移転に関する諸々のことについて、すべてお世話くださった洛友会幹事をお引き受けいただいている名誉教授の木村磐根先生にお礼申し上げます。

名簿の発行
 洛友会会員名簿の発行につきましては、過去には年末までに行われ、会員の皆様が年賀状を出されるのに利用できるようにしていたのですが、今回につきましてはプライバシー保護の観点から会員の皆様にアンケートをしたり、皆様の住所、所属、電話番号、電子メール番号などについて名簿への掲載の可否をいちいちお尋ねするといったことをやって参りました結果、編集に時間がかかり、名簿の発行は1月末か2月始めになる予定であります。会員の皆様方にご不便をおかけしますが、よろしくご了解お願いいたします。
 なお、名簿の配布は会費を納入していただいている方のみにお送りすることになりますので、会費未納の方は是非とも納入をお願いいたします(お問い合わせは電話075−383−7014 洛友会事務局まで)。この名簿の発行についてもほとんどすべて木村磐根先生がお世話くださいました。

電気系教室の情報誌cue
 洛友会が年2回発行している電気系教室の情報誌cueは、電気系教室の研究内容やその他の活動を紹介する広報誌であり、その編集はこれまで全面的に教室に依頼してきました。しかし第15号からは洛友会側からも編集に参加し、広く一般にも理解しやすい、親近感を与える誌面にする努力をしております。
 cueの配布先は、希望された洛友会会員と、電気系教室の研究に関心を持つ企業などの賛助会員、他大学の電気・情報系図書室としておりましたが、これからは電気系教室の学生にも配布し、学生諸君に教室の研究内容をより良く理解してもらうようにする予定です。この情報誌の内容はインターネットでも見られますのでご覧いただき、会員の皆様のご意見をお聞かせいただければ幸いです。

大学同窓会
 京都大学では、学部あるいは学科単位の同窓会は作られているのですが、大学全体としての同窓会は作られていませんでした。国立大学の法人化以来各大学で大学単位の同窓会が作られるようになり、京都大学においても種々検討された結果、昨年11月3日に全学同窓会の発会式典が行われました。会長は総長(現在は尾池和夫総長)と会則で決められております。
 この全学レベルの同窓会は当面会費を徴収せず、同窓生の懇親の場ということのほかに、大学の諸活動のPRの場、あるいは京都大学の活動を卒業生の皆さんに理解していただく場としての性格をも持つもので、年に一回ホームカミングデイ(卒業生に大学に帰ってきていただく日)が開催されるように聞いております。こういった京都大学の活動や洛友会の活動、cueの内容などは全て京都大学のホームページからたどって見ることができますので、ぜひご覧ください。

会員相互の親睦のための工夫
 洛友会にとって会員の皆様方の間の親睦を図ることがもっとも大切なことですが、予算などの関係で容易ではありません。そういった中で、費用をほとんど必要とせずに親睦を図れる方法として、インターネットを利用する方法があるのではないかと考えています。
 最近はWeb2.0といった言葉が使われていますが、会員がコミュニケーションできる場を洛友会のサーバに設置することによって、会員の皆様がいろんなテーマについて自由に意見を交換したり、自主的な催しを企画し参加を呼びかけたりする広場(掲示板)とすることが考えられるでしょう。他にも良いアイデアをお持ちの方もいらっしゃるでしょうから、お教えいただきたく存じます。

  今年が皆様にとってより良い年でありますよう。


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