会社訪問記
洛友会会報 218号


〜イー・アクセス株式会社〜

洛友会本部事務局 山田 美津紀

 私は洛友会本部事務局の事務員として、平成18年よりお手伝いをさせていただいておりますが、京都大学へ勤めさせていただくきっかけとなったのは、荒木光彦先生(昭和41年卒)が拠点リーダーとして統括されました、京都大学21世紀COEプログラム「電気電子基盤技術の研究教育拠点形成」の秘書として採用していただいたことにあります。その後、洛友会の事務局が電気系教室内に移管されることとなった際に、荒木先生のご推薦で、洛友会の事務員もさせていただくこととなりました。
今回、イー・アクセス株式会社を訪問させていただきましたのは、荒木先生の洛星高校からの同級生である安井敏雄氏が社長を務めておられ、さらに、会社の創業者・会長である千本倖生氏も電子工学科(当時から35名の小人数のクラス)の同期・同窓という、大変めずらしい会社であるということで、会社を訪問し、お二人にお話をお伺いしてきました。
 地下鉄銀座線虎ノ門駅から徒歩5分程の所の、隣にはホテルオークラ、また近くにアメリカ大使館等がある都心のなかでも緑の多い閑静な場所にあるイー・アクセス株式会社のオフィスビルでお二人にお会いしました。
 千本氏と安井氏は、電子工学科に在学中、それぞれ学業よりも課外活動に夢中だったそうです。千本氏はキリスト教学生運動、安井氏は京大オーケストラにそれぞれ情熱を燃やし活動されていたそうです。一方荒木先生は、小・中学時代からすでに京都で広く名前の知れ渡った大変な秀才で、ひき続き大学入学後もその明晰な頭脳の素晴らしさを遺憾なく発揮されていたそうです。安井氏は、高校からの同級生のよしみでいつも試験前には、出席できなかった講義など荒木先生にノートを借り試験前の徹夜での準備におおいに助けられたそうです。安井氏が留年もせず優秀な成績で大学院へ進学できたのも荒木先生のノートのお陰でしたと感謝されていました。一方、大学院へ進学しての勉強に余り興味のなかった千本氏は、当時就職担当であった近藤文治先生(昭18年卒 洛友会名誉会長)の勧めで日本電信電話公社(現NTT)の事業部門に就職することになったそうです。当時の京大生は、事業部門よりも研究部門への就職がほとんどであったそうですが、千本氏は研究よりも会社経営に興味があったとのことですので、近藤先生はその辺を見抜いておられたのでしょう。
 安井氏は大学院終了と同時に、アメリカのイリノイ大学へ留学。千本氏もフルブライト奨学金を得てフロリダ大学へ留学されました。日本の大学教育では、研究・論文が中心であるのに対し、アメリカの大学では研究に加えて教育にも重点をおいているという、大きく違う環境の中、京都大学時代で身につけた、基礎学力をベースに留学中、しっかり励みしぼられ、二人とも無事電気工学のPh.D.(博士号)を取得されました。アメリカでの留学生活では、学業のみならず、その後の人生を大きく変えるような価値観や人との遭遇など大変重要な経験だったとおっしゃっていました。
  

イー・アクセス潟pンフレットより  右から千本倖生氏、安井敏雄氏

 アメリカ留学の後、千本氏は電電公社に復帰し10年以上勤務し事業部門の管理職を経験されましたが退職し、起業家として第二電電(現KDDI)を京セラの稲盛氏と共同で設立、創業されました。同社を副社長として退任されるまで8000億円の規模にまで大きく育てられました。その後、慶應義塾大学大学院の教授やアメリカのバークレー、スタンフォード、ハーバード大学などの客員教授もされ活躍してこられました。1999年には、起業家として再びADSLを事業とするイー・アクセス株式会社を創業・設立されました。一方、安井氏はイリノイ大学博士取得後日本IBMに入社し、即アメリカIBMの開発研究所に赴任。その後、日本IBMの開発研究所長など含め23年の勤務。東芝・IBMの液晶合弁DTI(デイスプレイテクノロジー)社副社長、米国ウェスタンディジタル日本法人社長、米国ソレクトロン日本法人社長とIT分野でグローバルなビシネス環境で重要な役職を経験されました。2004年、安井氏はこれらの豊かな経験と実績を買われ、イー・アクセスの社外取締役に、そして2006年社長に就任されました。安井氏はその経験からも通信会社にない人材でもあり、いわゆる社長業務以外にも端末商品企画や地上局無線設備などの機器メーカーとの開発・製造に関してリーダーシップを発揮されてきておられるそうです。信頼できる安井氏の参加により、千本氏はイー・アクセスの会長に就く一方、もうひとつの大きな新規事業である携帯電話事業のイー・モバイル株式会社のCEOとして注力・専念されています。NTTドコモ、自身が立ち上げたKDDIのau、ソフトバンクモバイルといった既存の大きな事業者のなかに日本では13年ぶりの新規参入として果敢な挑戦をしているのがイー・モバイルです。安井氏からみた千本氏は、今迄付き合ったりみたりしてきた世界のビジネス・リーダーの中でも、その仕事ぶりは外国への視線・経験、人脈なども含め世界に通じる稀有な経営者であり、そして、外から見れば厳しい人に見えますが、本当は細やかな心遣いのできる、とても日本的な人情家で大変ウエットな方です、とのことです。学生当時はあまり接点がなかったとのことですが、京都大学時代からの長い付き合いにより生まれた互いを尊敬する心や信頼関係をお二人から十分に感じ取ることができました。お二人とも母校を思う気持ちが強く、同期の会や安井氏はさらに研究室仲間・先輩・後輩の「同釜会」などでお付き合いも長く続いているそうです。京都大学が結んだ縁(もちろんそれだけではありませんが)により一つの企業がさらに大きく成長するということは、同窓会をお手伝いする者としてもとてもうれしいことです。今後のお二人の更なるご活躍を期待しております。






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