巻頭言

洛友会会報 220号


卒業五十周年・北海道洞爺湖サミットの年を迎えて

北海道支部支部長 
中山道夫(昭33年卒)

  彼岸ともなると、北国札幌の寒さも緩み、雪解けが目に見えて進みます。そして、本州からは桜の開花情報が聞かれるようになりました。3月19日には、札幌市内の小学校の卒業式が一斉に行われるなど、3月は春の訪れを告げると共に卒業の季節でもあります。
 我々が卒業したのは、昭和三十三年(一九五八年)、今年は丁度五十周年を迎えます。
 当時の卒業生は、電気五十人弱、電子三十人弱、併せて七十数人であったように記憶しています。なお、この内、電子工学科は第一回の卒業生です。
  この半世紀を振り返ってみれば、「光陰矢のごとし」と「過ぎてしまえば一場の夢」の二つの想いが輻輳して胸中を過ぎります。
  この間の世の中の大きな変化としては、月並みな言い方になりますが
 「科学技術の進歩と産業の革新を通じ、日本経済がオイルショックや公害問題などを克服しつつ右肩上がりの発展を続け、世界有数の経済大国となり、結果として高い生活水準を手にしたこと」
 「情報化とグローバル化の進展と、これらに伴う価値観の変化」
などが挙げられましょう。
 我々の世代は、仕事や立場は違っても何らかの形でそれらに関わり、充実感や達成感を味わったことが、一つの共通体験となっているような気がします。
 そして、卒業記念アルバムを開けば、教室主任であった林先生の送別の辞にある様に学生時代を懐かしく思い出すと共に古希をすぎた今を顧みて、時がもたらした変化を思い、五十年の時間を改めて感じた次第です。
 我々の卒業五十周年の今年、二〇〇八年は、偶然にも、七月に「北海道洞爺湖サミット」が、八月に「北京オリンピック」が開催される年でもあります。
 特に「洞爺湖サミット」は、北海道にとって一九七二年に札幌で開かれた「冬季オリンピック」以来の、大きな国際イベントであり、更に、地元北海道が誘致を願った結果、昨年の四月二十三日に開催が決まった経緯もあり、道民には自分達のサミットとして、何とか成功して欲しいとの想いが強く、官民挙げて支援に向けた取組みを進めています。
 まず、北海道庁に「サミット推進局」を設置すると共に、道庁に加えて、経済界、産業界、農林・水産業界、等の各界を網羅した道民一体の組織である「北海道洞爺湖サミット道民会議」を、高橋知事を会長として立ち上げました。
 この道民会議は、
 1) サミットの成功に向け万全の体制で支援協力をする。
 2) 私たちが愛し誇りに思う北海道の魅力を、世界の人達に伝えること。
 3) 開かれた心と細やかな気配りで世界のお客様をおもてなしすること。
 4) より良い環境と交流の絆を子供たちの未来に引き継ぐこと。
の四つを命題として、民間企業・団体、自治体などが主体的に行動を進めるもので、その範囲は、サミットで求められる各種サービス、情報の提供、関連セミナー開催や支援、警備対策への協力等に及び、既に活発な活動を行っています。
 そのほか変わった試みとして、北海道に関わりの深い作家、倉本 聡氏の提唱による「ガイア・ナイト」があります。その内容は、「サミット九十九日前の三月三〇日十八時から二十時迄の間、電気を消して闇と向き合い、一本のローソクを囲んで家族や友人が集い、語り合い、私たちが身を置いている文明社会を見つめ直す事で、道民の暖かさと地球環境への意識を示そう」と言うものです。
 この試みは、自由参加、自主参加ですが、準備は進んでいるようで、申込の形で参加の意思を示すウェブサイトも設けられ、相当数の人が参加するものとみられています。
 サミットが開かれるのは、多数の観光客が訪れる道内屈指の観光地洞爺湖、その西岸の小高い山の上に建ち、眼下に洞爺湖と内浦湾を見下ろす「ザ・ウインザーホテル洞爺湖リゾート」です。このホテルの最大の魅力は、全ての方角に広がる雄大で美しい景観と言っても過言ではありません。
 緑に覆われた四つの島を浮かべた湖を正面に、左手北の方角には、「蝦夷富士」と呼ばれる「羊蹄山」の秀麗な姿が、斜め右には噴煙を上げる「昭和新山」と「有珠山」、右手南の方角、内浦湾の彼方には「駒ケ岳」が望まれ、「バランスの良い景観」「何回見ても飽きない眺望」と言われるのが納得できます。また、世界の主要国代表の方々に「日本の美しい自然を洞爺湖で感じてもらいたい」との安倍前首相の言葉も、素直に受け止められます。この素晴らしい眺望を是非多くの方に見ていただきたいと言うのは、我々道民の気持でもあります。
 サミットの主なテーマは「地球環境問題」で、テレビや新聞でも連日採り上げられています。会議では、「セクター別アプローチ」、「キャップ アンド トレード」等の具体策を含め論議されるのでしょうが、国際政治の場となると各国の利害が絡み、厳しい議論となることが予想されます。しかし、議長国の日本としては、温室効果ガス削減について将来に向けての展望が少しでも開けるよう、広い選択肢を視野に置き、リーダーシップを持って取り組んでいただき、北海道でのサミットが成功裡に終わる様願って止みません。


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