福井県について
〜中途半端な位置にある地元民満足度No.1な福井県の魅力?〜
宮川 博尚(平8年卒・北陸支部)
私がかつて育ち、また今再び住んでいる福井県。知名度が低く(かつて知名度が低めだった宮崎県は知事の活躍ですっかり有名になってしまい羨ましいです)、福井県って東北の?と、福島県と間違われるのはよくあること、そんな福井県の知名度アップを図るべく、せっかく頂いたこの機会に、福井県について少し私見を書いてみます。
まず福井県はどこにあるのか。本州のほぼ真ん中辺り、京都府、滋賀県、岐阜県、石川県に隣接しています。日本の真ん中にあり、主要都市(大阪、名古屋)から割と近く、でもJR普通列車は直通していない、東京からも日帰り可能な距離、でも新幹線も羽田直行便も無い、と大変「中途半端」な距離にあります。行政管轄は省毎に異なり、エネルギーは中部経済産業局(名古屋)北陸支局(富山)、通信は北陸総合通信局(金沢)、道路は近畿地方整備局(大阪)、農業は北陸農政局(新潟)、企業の営業管轄も大阪だったり名古屋だったり、あるいは金沢、富山だったりと、中部であり北陸であり近畿でありと不確定。福井県を構成する旧越前國(もう1つの若狭國は明らかに近畿ですが)は正にちょうど近畿中部北陸の3地域の境なので、昨今の道州制論議でも何処に入れるのか、案によってばらばらです。
そんな福井県を、標語好きな某お役所は「生活満足度日本一」と表現しています。実際、福井県は住む者にとって非常に恵まれた環境です。自然環境、水、食材に恵まれ、公共施設も買い物場所もそれなりにはあり、田舎なので家は広く(おせっかいな人が多いから)治安も良く、共働きと3世代近居・同居が多いので貯蓄も出来て子育て環境にも恵まれて、と良いこと尽くし、だから所謂「暮らし満足度指標」は全国トップクラス。それに主要都市から中途半端な距離にあるという点はメリットでもあり、地元に無い遊び場や買い物場所も、ちょっと都会に出かければ事足ります。
ですが、暮らし満足度調査でも触れられることはなく、そして地元民自身も多分気が付いていない点、これは福井県(特に北部(嶺北地方:旧越前國から敦賀を除いた領域))の人々が、「自分達が満足しているからそれでいい」と無意識のうちに思っているフシがあること。私はこれを、お役所の標語をもじって「地元民満足度No.1」と表現できると思います。実際、福井県嶺北地方を訪れる観光客は少ないです。食材、景色等の素材には魅力があるのに客は少ない、PR下手と分析されることが多い様で、地元民もそう思っている様ですが、思うに、そもそも地元民には本気でPRする気が無い、もし客が沢山来れば名所や店は混雑するし道は渋滞する電車は混むし邪魔で、むしろ客は少なく自分達が満足出来ている今の状況が良い、と思っているに違いありません。だから観光客など他所の人への配慮という概念が根本的に欠けている気がします。例えば交通機関では、公共交通の路線、ダイヤは地元民の通勤通学向けにしか最適化されておらず、観光には不便なことが多い(県外の友人に観光案内するにも鉄道など公共交通では難しく、結局自分の車でご案内するしか方法が無いという始末…)、でも地元民は観光にはマイカーばかりだから困っていないとか、片側2車線道路で右車線が事実上右折レーンになっている場所が多々あり、地元民がその場所で右折したいからそうなるんですが、当然、案内標識の設置は無く、でも地元民はみんな事実上右折レーン場所を知っているから困らない、しかし他所から来た方は右車線を走っていて、その場所に至って初めて分かり困るとか。京都で運転免許を取った私も地元に戻った頃は相当悩まされました(京都では左車線には路上駐車、原付、市バス、タクシーが多いので、片側2車線道路は右車線を走る癖がついていた)。でもこれらは行政や交通事業者の問題以前に、そもそも地元民の「自分達が使えればそれで良い」という感覚が、交通インフラをそのように最適化してしまう結果とも思えます。
そんな「地元民満足度No.1」福井県には、さまざまな美味いもの、しかも地元民しか知らないものが多種あるのが魅力です。そんな中から私の好きなものをいくつか紹介します。しかしこれら(特に酒)は、「地元民の必要を満たす程度の少量しか生産されていない」ため、皆様ぜひ福井に来て堪能してください。なお県内の公共交通は前述のとおり貧弱ですので、福井駅でナビ付レンタカーを借りることをお奨めします。また2車線道路は基本的に左車線を走行しましょう。
・水…嶺北地方は白山を抱えるため良い水に恵まれています。嶺南地方(旧若狭國および敦賀)にも名水がたくさんあり、有名なのは上中の瓜割(瓜が割れるほど冷たいのだとか)、また奈良東大寺のお水取りという行事がありますが、東大寺へ水を送る「お水送り」は、嶺南の小浜で行う行事です。小浜から送った水を奈良で受け取るのが「お水取り」。水が美味いので米も美味い、米に限らず食材は何でも美味い、そして酒も美味い。
・米…世間では誤解されていますが、日本の米の最高峰「コシヒカリ」は、福井県農業試験場が開発した品種です。ですから当然、福井県での栽培に最適化されており、福井県産のコシヒカリは最高に美味しい、新潟の方には申し訳ないですが、魚沼産なんて目じゃありません。
・そば…そばの名産地というのは、そもそも寒くて土地が痩せていて米が取れないから蕎麦を作る土地が多いですが、福井の場合は米も作れるし蕎麦も作れます。蕎麦はどの店で食べても美味い、平均レベルが高いです。この地方独特の食べ方は「おろしそば」。冷たいそばに、ねぎ、鰹節、大根をかける、特に大根は汁をたくさんかけます、大根は消化に良いので正に健康食(他所の土地にもおろしそばありますが、大根汁をあまり重視していないようです)。
・かに(ズワイガニ、セイコガニ)…坂井市三国で上がるものが最上級、毎年皇室に献上されます。雄のズワイガニは見栄えするし、県外でも食べることは可能でしょうが、でも実は雌の小さいセイコガニが良いのです、なかなか県外では食す機会はありません。私は実はカニはあまり好きでは無いのですが、でも三国の民宿で食べたカニは美味しかった、良いものは美味い。
・ふぐ…主に嶺南地方(旧若狭國および敦賀)。個人的にはカニよりも好き、民宿でフグ刺しから始まりフグ雑炊に至るフグ尽くしなんて最高です。個人的には忘年会はカニよりもフグ!
・酒…良い水と冬の冷えこみがあり、酒造りに恵まれた条件の福井では、酒は基本的にどれもレベルが高い、どれも美味いです。しかし小規模の蔵が多く、県外で入手可能なのは「黒龍」(永平寺町松岡)、「一本義」(勝山市)くらいでしょうか、でも生産量が少ないということは手抜きが無く丁寧な造りのものばかりです。私のお気に入りは「白岳仙」(福井市)と「花垣」(大野市)。「花垣」はJALのファーストクラスで提供されると聞いたことがあります(乗ったことが無いので分かりません)。「白岳仙」は昔は無名だったのが(実は私は京都の酒屋「六條名酒館タキモト」主宰の日本酒会で知りました)今はすっかり有名になってしまい、あちこちの店で供されるようになったのが、ちょっと寂しい、でも美味しいです、一番のお気に入り。
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