環境に優しい家作り(その2)
薗田 徹弥(昭51年卒・九州支部)
前回、自然エネルギーの活用について述べました。今回、自然素材を中心に記述していきます。
我が家は木造無垢の家ですが、使用している杉、桧等の材木は熊本地場の工務店さんらしく、熊本南部の多良木町の山奥から切り出しています。木材は、乾燥させないと構造物としては使えませんが、そのやりかたに我が家を担当した工務店さんのプロとしてのこだわりを感じました。
その工務店さんでは秋から冬にかけて伐り倒した材木を、葉をつけたまま太陽と風の自然エネルギーで乾燥させ、粗挽きした後、さらに一年かけて天然乾燥させたものを住まいの素材としています。いわゆる「葉つき乾燥材」を使用していますが、これには多くのメリットがあります。じっくりと天然乾燥させているので、香りがよく艶があり、しかもカビがはえず、虫がつきにくいのです。また、強度が劣化しません。さらには、材木運送時間は山から製材所まで一時間内外、軽いので運送用のトラックの化石燃料も節約できます。近くの山の木の住まいは、自然にとっても、やさしい住まいなのです。
・珪藻土とクロス
内装の仕様として、珪藻土、エコクロス、和紙クロスと場所によって使い分けがあります。
珪藻土は昔で言う土壁ですが、太古の植物性プランクトン(珪藻)が、長年にわたり海底や湖底に堆積して化石化した天然の鉱物からできています。その性質が、「調湿性」という最大の特性と共に、「脱臭性」「耐火性」など様々な優れた効果を発揮するので、ダイニング、キッチン、ベッドルームのような、日々最も滞在する場所の壁、天井に珪藻土を使用しました。それと、プロのベテランがコテ塗りで施工するので、デザイン性も勘案し、リビングの一階部分のようなよく映えるところを珪藻土にしました。珪藻土は昔から火に強い土として、七輪、コンロ、耐火断熱レンガなどの原料に使用されてきました。そして現在では、浄水場やビール工場での、ろ過材としても使用されているとのことです。また、シックハウスの原因となる化学物質を一切含んでいませんし、多孔質の珪藻土が湿気を排除、結露を防止し、カビ・ダニの発生を抑える効果があります。
エコクロスは、洗面室の水回りで使用します。ビニルのような肌触りですが、Webによると「ホルムアルデヒドを吸着し安全な物質に分解、タバコ臭や生ゴミ臭も同時に消臭し水や二酸化炭素に分解、空気をキレイにしてくれる。燃焼時にダイオキシンといった有害ガスを発生しない環境に優しい天然素材原料の壁紙」とのことです。この壁紙に糊を塗って張っています。
和紙クロスは、珪藻土とエコクロス以外の場所に使用しました。和紙は繊維の強い植物の皮を原材料に使い、調湿効果など優れた特性を持ち、意匠的にも独特の風合いが室内に落ち着きを醸し出すとのことで、和室はじめ多くの部屋にこの和紙を適用しました。
珪藻土の壁は、少々の汚れなら消しゴムで消せるし、ひどくなれば塗り直せばいいでしょう。エコクロスは、ちょっとした汚れは取り易くなっていますが、ひどくなれば一度剥いでからの張り直しになるのに対し、和紙クロスは、汚れが目立ってきたら上から重ね張りができるのでとても便利です。
・断熱材とデコスドライ工法
断熱材にも種類があるようですが、我が家では自然素材の一つとして「セルロースファイバ」を断熱材として使用しています。これは刷り損じの新聞などを粉砕、綿状にして、ホウ酸を混ぜて作られる木質繊維で、その微細な空気層が断熱、防露・調湿、防音に効果があります。それを壁の中に隙間無く吹き込むのがデコスドライ工法と呼ばれるもので、施工精度が高く、その断熱性能は一般的な仕様の二倍以上とのことです。一般的によく見る断熱材は袋に入っていてその袋を壁等に敷き詰めていくのですが、それでは壁の四隅や袋の間に隙間ができて、それが断熱効果を下げる要因になります。デコスドライ工法はまだ日本ではマイナーな断熱工法ですが、米国では広く使用されているようです。
・無染土無着色の八代畳
工務店さんでは、国産イグサ最大の産地である熊本県八代地区に足を運び、農家の方と直接提携し、産直価格で安く、かつ安心な製法によるイグサを使用しています。そのポイントは、減農薬栽培+無染土+無着色の三つです。多少の色むらに目をつぶれば、安心安全の畳とのこと。畳は赤ちゃんがハイハイし、直接皮膚と接触する部分ですので、特に気を配りたいですね。
・「匠の塗油」
我が家は床も無垢ですが、それに艶出しするクリア塗装は、色の着いていない樹脂(ラッカーやウレタンなど)を刷毛・ローラー・スプレーガンなどを使って塗装することで、艶出し以外に表面保護や手触りをよくする目的があります。塗料は「匠の塗油」と呼ばれ、日本古来よりあらゆる職人達に愛用されている圧搾製法・一番しぼり「純正荏油」をベースにした百%植物油です。荏油は植物油の中で一番の乾性油で、近年アレルギーに効果があると言われているアルファー・リノレン酸を五〇%以上含み、精製されたものは食用に利用されています。従って、住まいの安心はもちろん、施工者の安全・健康にも配慮した自然派の塗油です。有害な石油系の化学物質、防腐剤、及び重金属などは一切含まず、ライフサイクルアセスメントを尊重した安心安全な塗油です。この塗料はいわば、「口に入れても、舐めても大丈夫な油」です。
今回、自然素材について述べました。次回は、我が家の構造的な特徴について記述します。
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