エレクトロニクス・サマーキャンプ報告
電気電子工学科では、最近の学生が工学的な体験(模型や電子工作など)に乏しいことを考慮し、昨年度より夏休み期間を利用してエレクトロニクス・サマーキャンプと称するイベントを開催している。今年は9月28〜30日の3日間の日程で、吉田キャンパスにて実施した。イベントの周知は、ポスターやホームページだけでなく、いくつかの専門科目の授業後にも紹介を行った。単位は付与せず、学生本人の意志で参加する形式を取っている。
内容は、目標達成型の課題に3日間かけてじっくりと取り組み、創意工夫や試行錯誤を繰り返しながら、最終的にその目標を達成してもらうものとなっており、まさに工学的な体験をしてもらうという趣旨である。3日目の午後にはコンテスト(学生、教員、洛友会会員に公開)という形で学生達に成果を披露してもらい、優秀なチームや個人には学科長名で賞を授与している。(洛友会から副賞として図書カードも贈呈。)
昨年は初の試みということで1回生のみの実施であったが、参加者した学生から大変好評だったので、今年は、2回生、3回生向けのテーマも用意し、3学年に対して実施した。基本方針は電気電子工学科企画・広報委員会で議論し、具体的な企画・運営は、4名の若手教員(須田准教授、蛯原講師、山末助教、佐藤宣夫助教)と約10名のTAで行った。
キャンプと称しているが、実際に宿泊するわけではない。ただ、時間を気にせず、仲間とコミュニケーションを密にしてキャンプの気分で充実した時間を過ごそうという意味でこの名称を使っている。(今回は、2日目に徹夜で製作・調整に取り組んだ学生が数名おり、その学生と徹夜に付き合ったTAにとっては名実共にキャンプとなった。)各学年の課題は以下の通りである。
● 1回生「LEGO Mindstormsによるロボット製作」
去年に引き続き、「柿ピーナッツ」の柿の種とピーナッツを分別するロボットを製作するという課題に、8チーム、22名の学生が挑戦した。最終日には、ルールや採点方法が規定された本格的な競技会が、TAによる司会と審判のもと開催された。試作ではうまく動いていたものが本番では誤動作し、競技の僅かな待ち時間にプログラムや構造を組み替える必要に迫られるなど、波乱と緊迫感に富んだ競技会で、観戦者も大いに楽しむことができた。最優秀賞、優秀賞に輝いた2チームのロボットの完成度は非常に高く、ほぼ満点に近いスコアを獲得した。また、独創的なロボットを作成した2チームには技術賞ならびに「うけたDE賞」が授与された。
● 2回生「Programmable System-on-Chipを使って音のでるものを作ろう」
アナログ、デジタル機能ブロックを内蔵するワンチップマイコン(Cypress PSoC)を用いて、何でも良いから音のでるものを作るというテーマに12名の学生が個人で取り組んだ。前半の1日半は、PSoCの活用方法についての集中セミナーが開催され、その後、学生達が各自のアイデアを実現すべく製作に取り組んだ。多機能オルゴールやゲーム、楽器、脈拍を音にする装置など、技術、アイデアに優れた多数の作品がコンテストで披露された。高校時代から電子工作やプログラミングをしているような猛者もいたが、電子工作は全くはじめてという学生も賞を受賞しており、経験を問わず幅広い学生に対応できる課題であることが確認できたので、来年も同一課題で開催する予定である。参加者全員の採点に基づき、最優秀賞、優秀賞、技術賞、アイデア賞が授与された。この2回生のテーマは、CQ出版トランジスタ技術編集部の後援もうけており、参加賞として月刊誌「トランジスタ技術」が、また、特別賞としてトラ技賞が1名に授与された。
● 3回生「走査型プローブ顕微鏡の製作」
これまでに授業や学生実験で習った制御工学と電子回路の知識を用いて、走査型プローブ顕微鏡の試料-表面間距離制御系の設計と製作を行った。ナノスケールの表面形状像という結果が目に見える形で得られることもあり、参加者全員で驚きと満足感を共有することができ、初めて像が得られた際には、自然と拍手がわき起こった。3回生向けサマーキャンプは今回が初回ということで少人数での開催となったが、教員、TAの目が行き届き、参加した学生間の交流も密で全体の一体感が感じられる良いキャンプとなった。製作のプラットフォームとしてナショナル・インスツルメンツ(NI)のELVISを活用し、NI社からは技術者の派遣協力もいただいた。
学生達が、苦労の末に目的を達成する喜びを自然に感じ取ってくれる様子を見て、企画・運営にかかわった教員、TAも大きな達成感を味わうことができた。3日目の夜には、交流会が天寅で開催され、参加した1〜3回生の学生達の上下のつながり、学生と教員・TAとの懇談の良い機会となった。
本イベントは、洛友会から、学生会員制度における事業として後援を頂いている。副賞および交流会開催費用の一部を洛友会からの補助でまかなった。また、3日目の発表会には、洛友会代表として名誉教授の木村先生に審査員として参加していただいた。
来年も開催する予定なので、最終日の発表会には、都合のつく方々は是非参加していただければ幸いである。サマーキャンプで課題達成に向けて生き生きと活動している学生の様子を見れば、電気電子工学の未来は明るいと確信が持てること間違いない。
サマーキャンプについての情報は、以下のページで公開している。
http://www.s-ee.t.kyoto-u.ac.jp/ja/summercamp
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